夏の思い出

 前略、どうも皆さま。マンスリーNajikoのお時間です。

PROJECT: SUMMER FLARE

 今回はVRChatで公開されたワールド、PROJECT: SUMMER FLAREの感想みたいのを書いていきたいと思います。ネタバレ(というかやった人向けの内容)の記事になりますのでまだ遊んでいない人は是非体験してから読んでください。この体験はぜひ、まっさらな状態で楽しんで欲しいのです。

「夏」

 さて、まずこのワールドに入ると、まばゆい夏の光景が広がります。美しくも日本の地方特有の素朴さをたたえたビーチ、どこか懐かしさを感じる小さな臨海水族館、そしてどこにでもありそうな団地、コンビニ、公園、神社……まさに我々が思い描く「夏」そのものが広がっています。ただはじめは、リスポーン地点のパネルに書かれた指示と思しきイラストに従う以外に何をすればいいのかわかりませんでした。わたくしは、このワールドにフレンドと来るのを楽しみにしていましたが、わけあって一人で入ることになったので初めは「何すりゃいいかよくわからんなぁ」と思いながら、指示と思しき手順に従うべくしばし奮闘していました。

終わっていた世界

 指示に従うと、「夏」は突如その狂気のテクスチャを剥がされ、世界の真実の姿が明らかになります。もうこの時点ですごい臨場感です。「何が起きたんだ!?」と困惑しながらも、仕掛けをさらに解くと道順などを詳しく教えてくれるガイドが現れます。このガイドの存在が何よりこのワールドの素晴らしいところの一つです。どんなに広大なワールドも、何をすればいいかわからなくなれば彷徨っておしまいです。最初に「夏」に放り込まれた時ですらそれに近い状態になりました。ここでガイドしてくれるAIのLupiは起動するとプレイヤーに常に追従してきてくれます。アバターにアタッチするわけでも、手に持っていなければいけないわけでもないので操作を阻害しません。メッセージもわざわざ操作をしなくてもその都度字幕として画面に表示してくれるのでプレイヤーはミッションに専念することができます。

夏を終わらせろ

 ミッションの内容は、ずばり「夏」を壊すこと。世界を覆う「夏」の狂気。その元凶となっている施設の発電系統を停止させることです。この地球では、氷河期が訪れているにもかかわらず、人類皆がHMDをつけて夏の幻を見せられ、皮膚感覚を改竄され続け「夏」という名の「狂気」に囚われているというのです。何とも空恐ろしい話です。この「狂気」の影響は夏のみならず、この地球上を支配しています。どうも、この「狂気」は単に幻として現れるものではなく、対抗手段として「現実」を上書きしない限り実体を持つ存在であるようなのです。プレイヤーは、この「狂気」ですべてが象られた施設の深奥を目指し、ガイドに従って冒険することになるわけですね。これらはVR上での体験として非常によくできています。VRCを遊んでいるプレイヤーにとって、目の前に表示されているオブジェクトが自分にとっての現実と同義になります。しかし、これはワールドのギミック次第でいかようにも姿形を変えることができる。その特性を最大限利用し、「そこにあるもの」「そこにないもの」を巧みに翻し、世界観の深みにプレイヤーを誘っていく手法は本当にお見事と言わざるを得ません。特に、後半の「現実」に放り込まれるシーンは「ボイスが聞こえなくなる」という、斬新な演出がありました。HMDを介してコミュニケーションをとっているプレイヤー……そのアバターがこのワールドの中では実は最初からHMDをかぶっていて、それを外したらどうなるかという入れ子構造の表現。これはやられたー! と打ち震えてしまいました。

「本物の」体感

 数々の演出はいずれも一言で言うと「エモ」に尽きます。あえて語るのは野暮なほど、蓋然性にあふれた表現。それを担保するのが、このワールドの徹底した仕様にあります。上に書いたガイドの追従機能に加え、とにかくプレイヤーの没入感を阻害しない親切仕様が体験を「本物」に近いものにしています。

 このワールドでは銃、そして偽・デュランダルと呼ばれる最強の剣を手に冒険を進めることになります。もし、ワールドで2つのオブジェクトを手に冒険を進めようと思ったらどうなるでしょう。両手がふさがって、インタラクトもロクにできなくなります。ではオブジェクトを捨て置くかと言われればそうもいきません。しかし、このワールドでは銃と剣はその辺に捨てて進んでしまっても大丈夫。何故なら、ガイドに表示された方向に手をかざすことで手元にいつでも呼び寄せることができるからです。だからプレイヤーは、武器が必要な時以外は両手を自由に使って冒険に専念することができるのです。まさに「映画の中に入り込んだような」体験を、そのプラットフォームの仕様に邪魔されずに味わえるということですね。今まで、どんなに素晴らしい表現がされているワールドでもVRC、延いてはVRゲームとしての枠組みの中にある以上どうしようもない「仕様」に多かれ少なかれ興を削がれる部分というのはどうしてもありました。わたくし自身、長く遊んでいるうちにそれに適応することが正解のように思っていました。ところが、この「夏」の仕様は「そんなものはどうとでもなるが?」と言わんばかりに別次元の体感をもたらしてくれたのです。

次の「夏」へ

 このワールドは最後の最後にプレイヤーがこなしてきたミッションの真実の意味が開示された上で、本当の意味で「夏」を壊し、人類の未来を拓く道しるべを示して終わります。一度プレイしただけでは味わいつくせないほどの綿密に練り込まれた世界観、そして表現。このワールドの前日譚にあたる「夏が始まる一日前」から続く伏線の数々。ハマればハマるほどあれが気になるこれが気になる、これをもう一回見たい……などなど、夢中になる要素が盛りだくさんです。いやぁ……本当にこれ、無料で遊んでいいんですか……いいんですか、そうですか……
 作者のヨツミフレームさんは今後設定資料やサウンドトラックを出す予定だそうで、そちらもあわせると一層楽しめるんじゃないかと思います。個人的には、この素晴らしい体験がVRCのワールドギミックにパラダイムシフトを起こすくらいのことがあってもいいんじゃないかと思っています。ホントに。
 さあ、そんなVRCの”よりよい”未来を夢見ながらわたくしは今日もログインしようと思います……怱々。

PS.初めてこのワールドに行った時はガイドがあっても途中でくじけるかも知れないと思っていましたが、フレンドのKtさんが来てくれたおかげで最後までミッションを遂行することができました。ありがとうございました。

カテゴリー: VRC

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